タイトル:自然人 2017 秋 No.54 電子ブック【サンプル版】

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概要

自然人 2017 秋 No.54 を抜粋した電子ブックのサンプルです。

夏から秋にかけて、日没後の雄島の沖合はライトを点灯した船が等間隔で並んでいる。これはイカを釣っている漁船や遊漁船で、光でプランクトンを寄せて、それを捕食する小魚を集め、最終的にその小魚を捕食するイカを釣り上げるためである。この漁火はとても幻想的でもあり、風物詩でもある。イカといえばスルメイカや、ホタルイカ、そしてダイオウイカなどを思い浮かべる方も多いかもしれないが、イカの種類は大変多くて日本近海種だけでも約130種類を数える。北陸には一年を通してさまざまな美味なるイカが来遊し、代表的な種を挙げると、春のコウイカに始まり、夏はケンサキイカ、秋はアオリイカ、冬はヤリイカなど。特にケンサキイカ、アオリイカ、ヤリイカはイカの中でも大変美味であり、最高級の部類に入る。イカは一般的には船で沖に行って釣るものであるが、北陸の海ではこれらのイカを岸から手軽に釣ることができ、とても恵まれた海域である。日本人はなぜかイカが大好きであり、全世界で水揚げされるイカのなんと約半分を日本が消費しているそうだ。我々の生活に深く根付いた重要な水産物といえ、そのためか同じ種類のイカでも日本各地でさまざまな地方名で呼ばれている。ケンサキイカを例にとると、福井ではマイカ、石川や関東ではアカイカ、山陰ではシロイカと呼ばれており、名前だけを聞くと赤色なのか白色なのかさえわからない。正式名称がアカイカというイカもちゃんと(?)存在しており、ややこしいの一言である。これは慣例的にその地域で多く水揚げされるイカをマイカと呼ぶらしく、地域によってマイカはスルメイカであったり、ヤリイカであったりもする。ちなみにマイカという名前のイカはこの世には存在しない。筆者はケンサキイカ、アオリイカ、ヤリイカを狙いによく夜の海に出かけているが、たくさん釣れた際にお裾分けすると当然のことながら大変喜ばれる。ブリやアジの場合は相手が困惑気味なこともしばしばであるが、イカだけは満面の笑みで受け取ってもらえる。少し複雑な心境である。もちろん家族も大喜びであるが、唯一怒っているのは我が家および近所の猫たちである。猫にイカを与えることはよくないらしく、家族からは絶対に与えてはいけないと忠告されている(大往生した先代の猫はイカが大好物であったが……)。いつもは人間よりも先に魚釣りの成果を食べられるのに今日はどうしてもらえないのか、潮の香りが漂うクーラーボックスの上でずっと啼いているのがなんともせつない。人気があるほど、イカにはいろいろな呼び名がある。笹井清二越前松島水族館雄島で考えた。連載・○○で考えた。ささいせいじ(越前松島水族館展示課魚類係、農学博士)東京大学海洋研究所に在籍した頃はウナギの産卵場調査でマリアナ諸島付近へ何度も通いました。ウナギのことなら何でも聞いてください。*越前松島水族館HPhttp://www.echizen-aquarium.com/釣り上げられた直後のケンサキイカイカ釣り船の集魚灯ずっと待ち続けている隣家の猫59