タイトル:自然人 2017 夏 No.53 電子ブック【サンプル版】

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概要

自然人 2017 夏 No.53 を抜粋した電子ブックのサンプルです。

ひん号で紹介した九頭竜川のアラレガコ(和名/カマキリ、アユカケ)の資源を回復し、伝統漁法や独特の食文化を復活させることを目的として、種苗生産の研究が福井県内で進められてきた。越前松島水族館では約40年前にアラレガコの繁殖に取り組み、当時では国内で初めて稚魚にまで育成することに成功している。しかし諸事情によりアラレガコ資源保護の気運が高まらず、いったん研究は途絶えていた。その後、福井県が種苗生産と養殖技術を確立し、現在はさらなる養殖技術の開発を目指し、若狭高等学校と福井県立大学の高大連携の共同研究が進められている。その結果、これまで出荷サイズ(全長20cm)に成長させるまでに数年要していた期間を、わずか9カ月間にするという大幅な期間短縮に成功し、しかも非常に高い生残率での養殖が可能となっている。伝統文化の復活には、まずは一般の方々にアラレガコという魚を知っていただき、少しでも関心を高めることが重要である。現在、越前松島水族館では養殖個体の飼育展示および解説パネル等で高大連携の成果を紹介している。絶滅の危機に瀕している九頭竜川のアラレガコ資源と伝統漁法、食文化の復活に微力ながら水族館が貢献できることを精一杯尽力していくつもりである。水族館で展示中のアラレガコは事実、見た目は大変地味であり、極論すれば集客効果はほとんどない。しかし、アラレガコのみならず絶滅の危機に瀕している淡水生物は残念ながら福井県内にも数多く見受けられるのが現状であり、これらの生物を絶やさないためにも、水族館では地味な水槽の陳列ではあるが、希少淡水生物の飼育展示、系統保存を行って来館者への啓発活動に取り組んでいる。ウナギを研究してきた筆者にとってアラレガコは、生理学・生態学的に大変興味深い生物であり、さらに川漁師、研究者などさまざまな分野の方々との繋がりも増え、この生物に関われていることを大変光栄に思っている。天然のアラレガコの入手は容易ではなく、越前ガニに匹敵する超高級食材であるのが現状である。筆者のような庶民には到底手の届かない食材であるが、高大連携の研究による養殖技術の飛躍的な発展によって、手軽にアラレガコ料理を口にできる日も近いと思われる。水族館職員としてアラレガコを一般の人々に知っていただくためには飼育展示を行うのみならず、食味も把握すべきとのことでアラレガコ料理を試食させていただいたことがある。九頭竜川産の三大ブランドの天然物の鮎、サクラマス、アラレガコを食べ比べると、初めて口にするアラレガコとサクラマスの味に感動したのは事実であるが、筆者の好みの問題か、一番美味しかったのは鮎であった。笹井清二越前松島水族館雄島で考えた。連載・○○で考えた。ささいせいじ(越前松島水族館展示課魚類係、農学博士)東京大学海洋研究所に在籍した頃はウナギの産卵場調査でマリアナ諸島付近へ何度も通いました。ウナギのことなら何でも聞いてください。*越前松島水族館HPhttp://www.echizen-aquarium.com/前アラレガコ料理(甘露煮)。頭部を柔らかくすることに難儀している若狭高等学校の飼育水槽。シェルターに隠れて見えないが1000尾収容している55